監督鈴木龍より個人への送別の言葉です。
アイト
鉄の意志の男。悪い意味で。「昭和第一学園の心臓、5番」という伝統を作った兄を持ち、幼少期から昭和第一学園に通っていた男。小さい頃はちょっとシャイな男の子といった感じであったのが、高校生になると頑固で人の話を一切聞かない強者になっていた。自信にあふれ、自分の価値観が固まっていたアイト。そんなアイトがAチームに入って変わり始めた。Aチームに出るということは指導者ではなく、他の全選手に認められるような振る舞いをするということ。ピッチ外で見ているのとピッチに立って見えるものは大違いだよな。献身的な守備、改善のための話し合い、後輩に教えながら引っ張る姿、どれも感極まるものだった。お前はこれからもその立場に立っていろいろ気づくかもしれない。親になった時に両親の愛にも気づくかもしれない。でもほんの少し想像も大切。見渡してごらん。変わったお前のことを、仲間たちは心から愛してくれていたと思うよ。大切なものを手に入れたな。
カズキ
フィールドをやったりGKをやったりと、最終的にどっちがカズキにとって良かったのだろうか。将来の夢を明確に描き、それに対して一切ブレない姿勢をとってきたカズキ。無事に将来の夢を達成してくれと心から思っているよ。それと同時にアドバイス。必ず自分と向き合わなければいけないときがくる。きつくて、つらくて、情けなくて、今の自分が全部間違っている気がする、そんな時がくると思うんだよ。そんなときに必要なのは結局、心の体力なんだよな。解決のチャンスが来るまで耐える体力が必要なんだよ。部活で大きく成長させてやれたかはわからない。でも、話しながら最後までやりきったことは紛れもない事実だよ。しっかりやり遂げたな。最後は体力!こんな根性論も時には大事だから夢に一緒に連れて行ってあげてよ。
カマダ
GKは家族。その家族の長男坊のような存在。気が利いて真面目で面倒見が良い。それでいてちょっとビビりで内に秘めた闘志を持つ。1年次からKOGの主力で試合に出場し、2年次には上級生の試合のスタメンで出場していた。華々しい経歴のように見えるが、2年の途中からモンスターが現れる。ライジュと争っていたはずが、まさかのダークホースリョウセイが出てきて、そこから2NDキーパーの座に座ることになる。それでもおれはGKはお前次第だとずっと思っていたよ。練習から日常まで、お前がいてくれたからしまりがあった環境になったよ。練習中のビルドアップの改善なんて感動したよ。それがさ、最後のTリーグの最後のシーンにつながるんだもんな。だからお前はいつでも仲間に愛されていたな。リョウセイは信頼されていた、としたら、お前は愛されていた、かな。つらいことも多かっただろうけど、ありがとな。いてくれてよかった。
カンベ
心がすべて顔に出る男。シュートセンスに恵まれ、すさまじいミドルシュートを放つ。攻撃的な部分で良さを発揮し、何度もAチームに推薦されてきた男。一方で守備のギアが身につかない。一定のペースで行き、単純に迫力が足りない。なんでだろうか。そんなうまくいかない感じが悲壮感になって顔に出てしまう…。ただ、何度も蘇る男カンベ。Bで自信をつけ、さらには決意の坊主姿。お前が坊主にするなんて思わなかったよ。坊主にしたってうまくならないよ。アピールにもなるってもんじゃない。でもなぜか坊主にしてからのプレーはキラキラしてたよ。決意ってやつの力なのかな。だから、心が顔に駄々洩れのお前は、最高に楽しそうだったよ。もっとA2で活躍してほしかったのが本音。でも良いストーリーを歩んだ素敵な選手の一人だと思っているよ。もっと一緒にやりたかったな。
キョウ
チーム屈指の運動能力を持ちながらも前に出たがらない男。キョウにはレギュラーで出られるだけの能力があり、1年次から期待していた選手だった。ただ、Aチームの雰囲気になじめず、Aに行くことを避けてきた。ヤナギとアイトと仲良かったキョウはAの雰囲気の違いが嫌だったのかもしれない。ただ、そんなキョウが最後の地区2部では立派に主力を務める。ヤナギとアイトがいたから?たぶん、顔つきを見てると違う気がする。真摯にやっているキョウを周りが受け入れていることを気づくことで、サッカーの楽しさと自分の力に気づいたのだと思う。友達も大事。それと同じくらい、時間をかけて作った仲間は大事。よく成長したな。欲をいえば、やはりA1でユニフォームを着てほしかったよ。
ケイゴ
こいつで感動したかったと思わせる男。全110名の部員を率いている以上、個人にひいきはできない。ただ、A1にきたら、この男にかけたかもしれない。正直、うまくない。メンタルは、最弱。びびって声が出ない試合の方が多い…。けど、こいつは優しい。そして、努力を止めない。リクとケイゴが二人で新入生の練習の手伝いのために残ってくれていたことを忘れない。ずっと道具をやり続けていたことを忘れない。川越さんのトレーニングをやり続けていたことを忘れないし、仲間に教えてくれたことを忘れない。実際、ヘディングの強さ=高校時代の伸び率、といっても過言ではない。お前がやってきたことは間違いがないよ。あとはさ、自信だよ。自信がつけばさ、お前は最強なんだよ。社会に出たら自信をつけるものを探せよ。それで信じろよ。そうすれば、お前は最強だって。必ず顔出しに来いよ。
コウゲン
とにかく器の大きさが勝負だった男。技量は申し分ない。勝負強さだって申し分ない。ずっとAチームだったようなエリート人生ではなく、Bチームの気持ちもわかってる。挫折だって繰り返してる。指導者から信頼もある。あとは、経験を積んで器を広げるだけ。ただ、3年次にはちょこちょこさぼる…。優しいからな。ショウエイや仲間に寄り添って目標からそれること多数…。ショウエイもお前もどんだけ期待して副キャプテンにしたか。確かにチームの勝ち星のいくつかはコウゲンやショウエイのおかげだと思う。ただ、もっとチームを勝たせられた男だと思うよ。全然足りないよ。たださ、それでもお前を副キャプテンにしなければよかったなんて思わないんだよ。それだけの魅力がお前にはある。いいか、そのコミュニケーション能力だけでていよく人生わたるな。うまくやっていこうとか思うな。しっかり自分の夢を明確にしてガムシャラにやってみろ。頭下げたっていい。でっかいことやってこい。できるよ、お前なら。
コウスケ
3年生の中で後伸びで成功した数少ない選手。実際今でも信じられない。1年次と2年次なんて正直印象にない。常にフィジカルが弱くて消える選手。特徴もぱっとしない。取り組みもパッとしない。典型的なBチームで埋もれてしまうタイプの選手。それがどうした。最後はスタートの選手だったじゃないか。こちらの価値観が揺らぐよ。今までの努力を評価して使いたいのに、そんな時間を無視した圧倒的なチーム貢献力。どこかでぼろが出ると思っていたが、湘南遠征の横浜総合戦で確信に変わった。こいつは間違いがない、と。何がきっかけだったんだろう?なにがそんなにお前を走らせたんだ?本当に良い選手に成長したよ。指導者としてしりたい、その原動力を。Tリーグに出してあげたかったよ。でもさ、一緒に戦った地区2部は最高だったよな。
コウタロウ
コウタロウは言葉ではなかなか表せない。コウタロウは中学生の時から練習会に来てくれた数少ない選手の一人。線も細いしフィジカルやアジリティに恵まれた選手ではない。ただ、
真面目さや献身性を考えると、この選手はチームの中心になる可能性があるとうっすら感じていた。それが、打ち砕かれる。膝を怪我した瞬間は大したことないと思っていたが、診断を聞くと前十字靭帯断裂。終わったと思った。特にコウタロウはやりながら感覚を研ぎ澄まし、フィジカルを上げていく選手。正直言葉が出てこなかった。なのにさ、なぜおまえはそんなに顔つきを崩さずにいられたんだ。なぜ冷静に最後の試合の交渉を俺にできたんだ。あきらめか?違うことを考えていたのか?決して成功ではない高校サッカーだったかもしれないが、コウタロウからは強さを感じたよ。何もできなくてごめんな。勇気づけられていたのは俺だったかもな。
ショウエイ
お前、おれの期待を返せ。ショウエイはまずおれがいなかったら入学できなかった選手。成績が足らず、中学のクラブチームの監督とバタバタと推薦入学をぎりぎり達成させた選手。国士舘も受かっていたというから驚き。そんなショウエイは問題児。しかも隠れてさぼる悪質な問題児。でも知っている、サッカーとチームしか自分にないと割り切った時のショウエイの強さを。ショウエイがキャプテンでも良いと思っていた。実際新人戦のあたりのカリスマ性は全員が認めるはず。しかし、ショウエイは人に任せるときは徹底的に人に任せるタイプ。リョウがキャプテンと決まってからの任せ方と言ったら…。もはや放置。お前もう少し仕事しろよ。でもさ、お前がいてくれてよかったと思っているよ。お前さ、その不安になる癖やめろよ。勝負時にも生意気でふてぶてしくいろよ。たぶんそうすればさ、人生大体勝てるよ。不安取っ払うくらい努力しろ。ふてぶてしい背中を常に意識してろ。
ショウタ
ミスターSDG。この代の代表選手を挙げるならショウタかもしれない。そして、間違いなく一番信頼していた選手。ショウタは中学生の時に一度だけ練習に来た、印象は小さくて技術がちょっとあるだけの選手。良さはあるが、スタートで出るには厳しいかもしれないという印象だった。ただ、俺はつくづく見る目がないと思うよ。こんなに圧倒的になるなんて。プレスの回数、強度、折れない意志、ブレない調子の波、何よりもサッカーが好きで好きでたまらない気持ち。俺はサッカーが好きだ。それと同レベル以上に語れる選手がショウタだった。監督と選手を超えて、仲間だと思っていたよ。お前がキャプテンマークを巻いて負けた選手権、おれは後悔していない。次はさ、勝たせるレベルに突き抜けて来いよ。普通さ、人生真っすぐだけじゃやってけないんだけどさ、お前はそれでいいよ。真っすぐ生きてくれ。それだけで感動できる魅力が出てくるよ。
ジン
おそらくこの代で一番後輩から愛された男かもしれない。思えば成功とは縁遠い選手だった。入ってきたときはちょっと左で蹴れる足が遅い選手。メンタルも弱く試合中に泣き出すこともあった。真面目に食トレと筋トレをやった結果、体重が増えすぎて一切動けなくなって帰ってきたときは終わったと思った。でもとにかく真っすぐだった。ジンは気の利いた言葉で仲間を引っ張るタイプというよりも、生き様で引っ張るタイプだった気がするよ。ジンの真剣さには「自分も真面目に返そう」と誰もが思う。そして緊張の中に天然で入れてくるこぼけが爆笑を生んでしまう。いじりやすくて存在が身近なのに、ブレない姿勢に尊敬してしまう。最高じゃないか。最後には他のチームの監督が口をそろえてお前をほめていたよ。欲を言えばもっと早く覚醒してほしかった。もっと一緒に夢を見たかったよ。地区2部の優勝は心から感謝するよ。
スザキ
Bの神様。間違いなく昭和第一学園サッカー部のBが腐らずに練習し続けられたのはこいつのおかげである。どんな環境でも真面目で信頼される。その期待に不器用ながら全力で応える責任感を持つ。Bチームの奴らが、「須崎だけにやらせられない、自分たちも何とかしなきゃ」と思い始めた時、そこで須崎はBチームを卒業することになった。ただ、須崎はAチームに入ってきた後は影をひそめることとなる。似たタイプのマサは逆にレギュラーにまで上り詰め、須崎はA2の試合に出られるかも怪しくなってしまう。その違いは、真面目さや自分の強さをサッカーに反映させるための、サッカーの理解が不足していたのかもしれない。いいか、お前の人間性はこれからも多くの人を幸せにできる。ただ、自分に力がないとだめだ。自分を表現する力を自分で手に入れろ。社会は器用にお前の良さを引き出してくれない。Bは最後まで須崎イズムが残っていたよ。Bの神様といって過言ではない。その成功と、Aでのあと一歩のくやしさをずっともって生活してほしい。
ソウタロウ
やらかし組。本来ならクビにしたいところだが、他の選手の温情で続けさせることにした。正直やらかした時に心配だった。もし戻してもやめてしまうのではないか、と。1年生の頃から空気を読まない大きな声や明るさを持っていたが、とにかく走りが苦手。FWにいても電柱のごとく動かない。技量はあるのでボールが入ればなんとかするが、それができていると勘違いする節もある…。だからサッカーがソウタロウを助けてくれないんじゃないか。やめてしまうんじゃないかと思ったよ。ただ、違った。とにかく仲間のためにプレーすると決めた決意は本物だった。自分の役割を見つけ、仲間の目標を信じて自分もそれに合わせ始めた。そうすると不思議だよな。サッカーがうまくなるんだから。立派にうまくなったと思うよ。発言も大人になったよ。仲間、サッカー、これで人間は変わるという良い見本だよ。お前は人を選ぶな。出会う人みんなを大切にしろ。たぶんそれがサッカー部への恩返しだ。
タクト
坊主で覚醒した男。実際は坊主になる前から覚醒はしていたけど。タクトはおれからしたら手を抜きまくりでどこかあきらめている選手にみえた。単純に自信がない選手だったと思う。それが3年生の途中から急に輝きだした。ずっと自信なさげにやっていたサッカーもできることからこつこつやりはじめ、発言も変わりだす。そもそも顔つきが変わった。周りから聞けば、自分でジムなどを使って筋トレをしていたということ。なるほど、と思ったよ。指導者や試合できっかけがあって輝く選手は多い。ただ、なにもないところに自分で生み出せる選手は少ない。タクトを見ていると本当人間は自信をもつことが一番大事だと思わされるよ。坊主もノリだったかもしれない。でも、顔つきが覚悟の決まった顔になっていたよ。実際存在感がどんどん大きくなっていった。頼もしかったし、戦う男は話していて楽しい。もっと一緒にやりたかったな。
チカ
ダイヤの原石。スピード、フィジカル、スプリントの回数、誰もがこの選手に目を付けると思う。おれも魅せられた一人。多少粗削りでも迫力あるプレーが魅力だったので育てるつもりでAチームでずっとプレーをさせてきた。ただ、その期待がチカの悩みを生んでしまったのかもしれない。アタッカーが少ない3年生の代で唯一のプレースタイルだったこともあり、大きな期待をかけすぎてしまった。アタッカーにはうまくいかなくなる時期が必ず来る。その時のために基礎的な部分や連携を伸ばしておかなければならない。チカにもスランプが来たが、想像以上に深く入ってしまった。明るく男気がある一方で、人一倍打たれ弱い。性格も加味して2年次にもっと厳しい環境に置けばよかったかもしれない。今でも考えてしまう。でも、やっぱりチカのプレーは人を惹きつけるんだよ。あのサイドでの疾走感、強気な突破とセンタリングをもう一度見たい。大学でもやってほしい。サッカーを楽しむ準備は高校でしたはず。覚醒した姿をまた見たい。
ユウタ
支える男。ユウタをこのサッカー部にもっとうまく貢献させられたかもしれないと最近よく思う。チームでも1・2番に走れないし、プレーも控えめ。選手として目立つ部分はほとんどなかったかもしれない。3年間よく辞めなかったと思う。もっと監督としてユウタにはやりこませて、もっともっと強くさせなければいけなかったと思っていた。ただ、それはおれの価値観の押し付けだったかもしれない。ユウタは、3年間、支えることに軸を置いていたのかもしれない。選手としてでられなくても仲間のことを率先してやっていた。そして、進学先もサッカー選手を支える道を選んだ。この選手は常にブレていなかったのかもしれない。おそらくユウタがとったと思われる写真などを見ても、みんな良い顔つきなんだよ。そのセンスをもっと活かせる環境を考えるべきだったかもしれない。想いはいっぱいあって、それに気づくのって大変だ。おれの価値観を広げてくれた選手だよ。
テッタ
この代で尊敬している選手の一人。真面目、努力家この言葉に尽きる。テッタはこの代で数少ない練習会参加者。決して派手なプレーヤーではないが、指導者に信用されてBチームで起用されることが多かった。Bチームの選手たちからも信頼が厚く、リーダー的な役割をすることもあった。ただ、なぜか自信がつかない。とにかく人からの影響が大きすぎて、自分勝手に自信を持てない。こんなに真面目にウェイトだってやってたのに。川越さんのトレーニングでリョウトとショウタとテッタの3人だった時だって曲げずにやってきたじゃないか。こつこつじっくり成長できる選手は多くないし、チームに必要な存在だよ。これから卒業してどうやって生きていくんでも良い。ただ、成功してほしい。戦い方を考えて、それでさ、自分で戦いきったこの3年間を自信にして輝いてほしいな。もっと一緒にトレーニングしたかったな。
ヒデ
昭和第一学園のお祭り男。サッカー未経験者で3年間続けたやつはほぼいないのではないだろうか。爆発的なスピードと強靭なばねを武器に戦うファイター。この男のストーリーはチームのストーリーとかかわる深さがある。Bチームで一定の地位を作り上げ、苦手な勉強も克服し、昭和第一学園の23番を期待されていた男。昭和第一学園の選手権の23番はBチームの想いを託された選手がつけるものである。誰もがヒデがつけるのではないかと思っていた。そしてヒデにつけてほしいとみんなが思っていた。ところが、夏からの3年生の低調によりレギュラーも大きく変わる。2年生が多く入ることでメンバー選びも勝利に対して慎重になっていく。そんな勝負時にヒデはどんどん空回って不調になっていく。そして自分の世界に入ってしまう。最終的には23番はヒデのもとには行かなかった。もちろんチームとして最善の判断であるし誰も後悔はしていないと思う。ただ、ヒデはどうだ?このあと一歩は何だったんだろうな。23番のヒデ、見たかったけどな。
ヒロト
一番最初におれが裏切られた男。覚えてる3年生もいるかもしれないが、おれは1年次にヒロトを育てることに躍起になっていた。この3年生が1年生だった時ボランチが不在だったのである。その中でヒロトを本気にさせ、体を強くさせることがこの代にとって大切だと思い、いっぱい怒り、いっぱいほめて自信をつけさせようとした。みるみると良くなったが、ある時を境に、ぱたっと存在が消えてしまった。本人がそこまで中心でやることを求めてなかったのかもしれない。そこから2年近く存在を消していた。おれは常にヒロトの姿を追いながら、内発的にやる気が出ればもっと良い選手になるのに、と思っていた。そんな中、Bチームの野田コーチが面白いことを言ってきた。Bでチームメイトから一番信頼されている選手はヒロトです、と。意外だった。表には見えないが、仲間から信頼される存在にいつのまになっていた。相変わらずしゃべらないけど、確かにたくましくなっていた。なんだよ、もっとはやく出て来いよ。
フクタロウ
奇跡の男。フクタロウは中学生の時にセレクションにきてくれた選手。来年は良いFWが来ると周りに言って回ったのを覚えている。ただ、テクニシャンにありがちな接触を避けるタイプのプレーヤーだったのでなかなか守備の迫力が出せずに試合に出られないことが続いた。そんなフクタロウを部長に選んだのは、3年生に一番足りない真面目にお互いが向き合い、内発的にやる気を出し合うことを一番促してくれそうだったから。ただ、フクタロウは外では100点でも、サッカーの守備において軽さを仲間に感じさせてしまい、周りがフクタロウを無責任に感じてしまう、という悪循環を生んでしまっていた。守備さえ何とかなればよかったのに。なんとかAできっかけを作り、覚醒することを望んだが、間に合わず、夏には3年生の解体も進んでしまった。フクタロウを部長に選んだことは一切の後悔もない。お前しかない。ただ、それを助ける本質的なリーダーを作り出せるのが遅すぎた。もっとプレーに集中できていれば…。そんなフクタロウが明海大学にスポーツ推薦で受かった時は驚いた。大学はフィジカル重視なのでフクタロウのタイプは相当将来性を見てくれないと取ってくれない。高校でフィジカルで出てないのに無理だと思った。それがまさかの合格。でもやはり相手の評価のポイントは人間性から見る「将来性」だった。これからが勝負だぞ。皆がお前に期待する。それをいかに上回れるかだ。プロになるなんて奇跡だ。簡単じゃない。でも、期待してしまうよお前には。普通、最後の試合であんなアシストシーン回ってこないよ。「運」強いな。お前の強運と、人間性に期待している。俺の夢も一緒に連れてってほしいな。
マコト
ふざけた男。3年生の悪い部分の権化。圧倒的なスピードとテクニックを持ち、試合をすべて変える力を持つ。サイドで使われることが多かったようだが、おれからしたら最高のセカンドトップだった。どこでもターンができて決定機を演出でき、自分もゴールに迫れる。最初から最高だったわけではなく、おれがやってほしいことを伝えると、素直にチャレンジできる力があったので、めきめきと伸びていく。いつでも戦術の中心だった。マコト自体はちょっと落ち着きのないお調子者という程度なのだが、レギュラーで、しかもチームの戦術の中心の男が、日常生活やミーティングなどオフザピッチで真摯に取り組んでなかったら、他の奴が報われないだろって話だよ。つまりは責任感がないんだよな。フクタロウとか一番怒ってたと思うよ…。たださ、そのフクタロウからの最高のセンタリングをお前がヘディングでたたきつけて、全部良いところ持っていくんだもんな。最後まで一貫してマコトらしいよ。もしやり直せたとしてもおれはお前に10番を与えると思う。そして、強制的に真面目にやらせる。
マサ
おれの想像を超え、指導者としての価値観を変えられた男。サッカーはフィジカル、テクニック、スピード、これがないと勝負の土台に乗れない。特にうちみたいな守備的なチームはそれが顕著だ。だから、マサに対しても良くなっても最終的にはA2の選手だろうと1年次にはたかをくくっていた。実際、人間性をおされてAチームに来たものの、地区2部のサブでなかなか試合に出られない日が続く。お荷物状態になってしまうこともあった。それが3年になってすべてが変わった。地区リーグの快進撃はまずはユウセイとマサが作り出した。明星学園戦は感動的だった。特に夏のマサはチームの中心だった。最後の成長をかけてチームに内発的な成長を促したときに、ほとんどの選手が考えることをさぼってきた分ついてこれなくなってしまった。そんな中、マサは独りで成長曲線を上に爆走する。そして湘南遠征の時におれの想像を超えてしまった。筋力がついてきたというのもあるが、基本は頭の良さで横浜総合相手に自分のサイドを完封してしまっていた。多くの選手を見てきたが、想像を超えるスピードで成長した選手は少ない。いやー、一緒にできて楽しかった。きつかった時期が長いのはわかっている。でもさ、おれの頭はマサの夏のインパクトでいっぱいだよ。
ミキト
フィジカルモンスター。卒業記念動画を後輩に見せた時に盛り上がっていたのはミキトのフィジカルの場面だった。ベンチで聞いていてもミキトの1対1の力はみんなが認めるものだった。なのに、なぜか自信がない。謙虚とはちがうような…。おれとの10分面談の時にはなぜ自分が出ているのかわからないということも言っていた。ミキトは確かに入ってきたときは一番下のチームで自信なさそうにプレーしていた。この代になってもまさかのレギュラー定着といった感じだった。エリート街道とは全然違う成長をとげてきた。急速にできることが増えていった分、自信がついていかなかったのかもしれない。だからプレーはうまくなっていくのに、判断に微妙な迷いが生まれ始めて、最後数試合は途中交代が続いた。2年次からもっと中心的だったら、どれだけの選手になっただろうか。できればサッカーを続けてほしい。たぶんもう一歩心もサッカーも成長できる。見てみたい。この代のベスト選手ベスト3に入る。
コヤナギ
おいしいところをさらった男。ヤナギは常にBにいた選手。できないわけじゃない、やらないわけじゃない、特別良いわけでもない。取り組み自体がこんな感じだった。自粛期間すぐ後にスノボ旅行に行くので練習休みますとアイトとキョウと言いに来たときはびびった。
Aチームに引き上げてみたものの周りとうまくかみ合わずにほとんどしゃべらずBに戻る。どこか思い切りにかけるというか、必死さにかけるように感じていた。そんなヤナギが最後数か月だけ強烈に光始める。今までリーダーとは無関係な生活をしていたのに、だれもリーダーがいなくなったBの中でキャプテンマークを巻き、地区3部優勝に導く。そして地区2部セレクションに勝ち残り、最後の決勝点をあげてしまう。最後に成長をぎゅっともってきたような選手だが、まあそれでもいいよ。本気になるって楽しいだろ?いろいろと見えるものが変わるだろう?その景色忘れるなよ。
ユウヒ
やらかし組、というか最初はただの不良。公園で捕まった時の様子を聞くと、もはやヤンキー映画の登場人物。会いに行くと、ふてくされ方もさまになっており、それこそ自暴自棄と言った感じだった。そんなユウヒが3年次に昭和第一学園のエースになって、他のチームの指導者からあのFWが欲しいと言われるほどになるとだれが想像できただろうか。坊主になってサッカー部を続けたいといってから引退までずっと坊主だった。どこかでぼろが出るとおれは少し思っていた。それがでない。むしろ、みるみるうまくなっていく。何よりも、どんどんチームに献身的になっていく。頭で貢献するタイプではないからこそ、プレーで貢献していた。真面目なやつより、体力があるやつより、頭の良さで貢献するやつより、ユウヒは献身的だった。覚えてるかな。ユウヒがサッカーをもう一度やるか迷っていた時、「自分にとって大切なものがはっきりあると、周りはそいつをかっこいいと感じてしまう」と話したことを。ユウヒにとってのサッカーや仲間がなんだったかはわからない。でも、かっこよく見えたよ。FWの献身性の伝統はユウヒとリクのおかげだと思ってる。
ユズ
チャンスや才能を活かしきれなかった男。ユズは今井さん体制の時に良さを爆発させていた。独特のリズムのドリブル、ミドルレンジからのシュートセンス、どれも魅力を存分に出せていた。そのままもう一個上のレベルにいくかと思いきや失速。出場機会にぱたっと恵まれなくなる。課題だった守備力やフィジカルの部分に後れをとったというのもあるが、完全にチームワークの波に乗り遅れてしまった感じがする。野田コーチも常に気にかけていたが、ついぞ爆発することがなかった。シャイな性格を変えられれば、もしくは仲間がそのシャイさを理解して良さを引き出せればまた違ったかもしれない。ただやっぱりこれから生きていくには自分で自分の良さを出していくことだと思う。間違いなく人と違った個性を持っている選手である。自信を持つこと、苦手に向き合うこと、これを胸にもっていれば輝く日は近い。一度使ってみたかったな。お前のドリブル好きなんだよ。
ライジュ
おれにとってライジュは毎日グラウンドにいる選手。どの選手も当然毎日いるのだが、ライジュは特にそう感じていた。言い方を変えると、毎日気になる選手。GKはどうしてもフィールドプレーヤーより面倒を見る時間が減ってしまう。だから自主性にかけるしかない部分も多い。そんな中で大けがを繰り返し、慢性的な怪我も抱え、第3GKの位置からなんとかしようとしているライジュを気にならない人がいるだろうか。あきらめてたり、適当なら気にならないのかもしれない。でも不器用ながら、本当に必死なんだよ。リョウセイもカマダもどんどん伸びていく中、本当に焦ったと思う。選手として当然だと思うし、引退までそのまま見守るしかないと思っていたよ。ただ、実際はライジュはいるだけでも助かってたんだよ。明るく、前向きで、怪我をしてもうまくいかなくてもメンタル砕けても、やり続けるお前が、チームにいるだけでもう大きい財産なんだよ。もちろん選手として最後までレギュラーを狙ってほしいからそんなことは言わなかったけど、今ならいえるよ。ライジュのような選手が全員であってほしい。難しい環境でも、戦い続けられる選手こそが最高だ。いてくれたことに感謝する。
リク
昭和第一学園のハイプレスの伝統を作り上げた男。過去数年のサッカーから反省して、FWの献身性をテーマに始まったこの3年生だったが、そのテーマを完全に浸透させ、当然にさせ、武器にして、伝統にしたのはリクのおかげだと思う。最初からユウヒが抜群に良かった。ただ、どの代も1人は良くても2人目が出てこない。そんな時に1年次も2年次もサイドでパッとしなかったリクに目が留まった。ただ、ユウヒ並みに走れるのか…。そもそもそんなに走りが得意な選手でもなかった。そんなリクがとにかく自分を変えていく。きつくて最初は足が止まっていたが徐々に走れる時間が伸びていく。3試合スタートにつかったらもうすでにユウヒとリクの2トップのプレスを超えられるものはいなかった。間違いなく3年生の勝利はリクの力が大きかった。10番がよく似合っていた。ただ、夏場に近づいていくとハイプレスよりも必要なことが出てくる。リクはオンのこだわりが強く、それで1・2年次に芽が出なかったのが同じ壁に当たることになる。怪我もありなかなか芽がでなかった。でもさ、最後までリクはだよりも走ってくれたよ。地区2部でつるまで走ってくれたのは感動したよ。華々しく成功したかはわからないが、チームに与えたものは大きすぎると断言できる。
リョウ
最後の試合に出られなかったキャプテン。リョウは下手だった。しかも一人で解決してしまうタイプなので大味なミスからの簡単な失点が多かった。しかも1年生から抜擢されたヒロトとの2CBで最初はボロボロだった。実際自分のことで精いっぱいでキャプテンどころじゃなかったかもしれない。うまくいかない原因をぱっぱと把握できるほどサッカーに詳しいわけじゃなく、試合の展開を変えられような技術もない。しかも内発的にやる気を出し、自分たちでまとまることが苦手な学年。自分も、チームも、変えなきゃいけないことだらけだったと思う。そんなリョウを見ているとキャプテンは重責だったかと感じることはあった。ただ、選手たちがリョウを信じてたんだよ。リョウの言葉をよく聞くし、リョウの存在をみんなが頼もしく思っていたんだよ。おれは本当にそれに感心していた。まとまらず、強くなりきれないこの学年が、夢をみることを最後まで忘れなかったのは、間違いなくリョウの存在が大きかったと思う。選手権にリョウがいたら、おそらくPKは勝っていたと思う。お前の存在ってでかいんだよな。後輩が活き活きしていたのもリョウの器の大きさゆえかな。できなかったこと多数。できたこと少数。でも、そのできたことの価値は莫大。なんか、リョウらしいんじゃないか。
リョウセイ
意味不明な男。こちらの規格でこの男を理解することができない。中学時代に練習会に来た時の印象は、この子はサッカーをやっていて楽しいだろうか…。といったところだった。なぜなら打ったシュートがすべて入ってしまう。それでいて気が弱い。大丈夫かな…。最初は本当にイメージのままで、カマダとライジュがレギュラー争いを繰り広げる中で完全に置いてけぼりをくらう。それでも筋力がついて良くなっていくが、Aに出てみないかと誘うと全力で拒否。しまいには泣いて絶対に無理だと拒否する始末。正直入ってきた時と性格はほとんど変わっていない。優しくてビビりで、でもすごい努力家で。左手のセーブが悪いから、ノートをめくったり食事など日常生活で左手を使うようにしていると聞いたときはしびれたよ。成績も結局ほぼ4.8以上を取り続けたのではないだろうか。変わったのはサッカーのプレーのみ。すごいよお前は。昭和第一学園の歴史上のGKで間違いなくベスト3に入るGKだし、他のチームからも絶賛されていた。大学でも通用すると思う。謎のGK。
リョウト
ミスター昭和第一。うちのサッカー部のイメージそのまま。バカになれる強者だよ。リョウトの1年次はほぼ印象がない。BチームでSHやったりSBやったり…。2年になっても特に変化がない。ただ、この選手を大切にしなくてはいけないと思わされたのは、休まないということ。必ずいる。川越さんのZOOMトレーニングも、みんなが言い訳してやらない中で、必ずいる。そして、気づいたら、チームメイトから大きな信頼を集めていた。この選手は大切にしなくてはいけないと心から思った。うまいとかじゃないのに、その選手の一挙手一投足に目が奪われる選手がいるんだよ。あんだけトレーニングしてるのにうまくならないな…と思いつつ、リョウトから目が離せない。いいか、バカみたいにできるって能力だぞ。特に大人になればやらなきゃいけないことが多すぎて、何かをバカみたいになんてできないんだ。言い訳してあきらめるんだよ。お前はそうなるな。バカみたいにやりこんでみろ。気づいたら、多分お前の周りに人が無限に集まってくるよ。
ワタル
ワタルの成長具合は地味だけど、すごく感動する。AZという強豪チームでプレーし、昭和第一学園に入ってきたが、どの指導者もワタルを頼っていた。指導者と話ができるし、真面目。とにかく大人っぽかった。かといってエリート街道だったわけではなく、Bチームに落選もした。当時のワタルはどこか自分のプライドに成長を邪魔されていたように見える。うまくいかない理由を周りに持ってきていたし、自分に向き合いきれていなかった気がする。それを完全に克服しきれにままAに戻ったが、確立した居場所がない。完全に成長する場所・ポジションを失った感じだった。今までのワタルなら腐ってたんだろうか。ただ、ワタルは坊主にして部活に来た。これはびびった。一番やらなそうなやつだからだ。正直坊主にしてもうまくならない。変わらない。でも、間違いなく変わっていたのは、自分と向き合い続けられたことだ。もう周りにできない理由を探していなかった。正直、かっこよかった。そんななんでもうまくいくほど人生楽じゃないんだよ。でもさ、そんな時にどんなふうに生きるかが大切だろ?何か月耐えたよ?何か月苦しくてもやり続けたよ。周りは気づいていないかもしれないけど、よくやったな。そうするとさ、引退試合で今までで最高のヘディングも、パフォーマンスも出しちゃうんだから、人生はたまんねえよな。

































