2020年度卒業生へ

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みなさん、ご卒業おめでとうございます。保護者の皆様におかれましても、ご子息とご子女のご卒業おめでとうございます。また、これまでサッカー部に対し多くのご支援を賜り、本当にありがとうございました。改めて感謝申し上げます。

さて、卒業生は今どんな気持ちでいるでしょうか。この3年間を振り返って、それぞれの想いがあると思います。私自身もこの3年間を振り返りました。ここでは、3年間の思い出話をしてもあまり意味がないと思いますので、みなさんの成長を大いに感じ、興味深かった話がありますので、ここでご披露するとともに、私からみなさんへ最後の送る言葉としたいと思います。

 

①「日本にある豊な文化」~2020年8月中旬の出来事~

それは、唸るような暑さの中、激しい声が飛び交う紅白戦の最中に起きた出来事である。私が仕事の休憩中にグラウンドに立ち寄り、ベンチで紅白戦を見ていたら、A1にボロ負けしたA2が何やら激しく言い合いながらピッチから出てきたのである。その中でもホタカとモリによる意見のぶつかり合いに注目した。話の内容は、失点シーンにおけるホタカのポジショニングについてモリが指示したことがきっかけだった。

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ホタカ「さっきの指示はどういうこと?」

モリ (ポジショニングについて説明を始める)

ホタカ(そのポジショニングについて理解ができず、何度も聞く)

説明と質問が何度も繰り広げられ、

ホタカ「ボールを奪われたエリアが悪く、その時の攻撃時ポジションからだと間に合わないよ!」

モリ 「切り替えが遅いだけだよ、早く切り替えれば間に合ったと思う。」

この言い合いが続いたあと、

ホタカ「守備時のポジショニングもわかったよ。切り替えについても頑張ってみるけど、ボールを失うエリアによっては、戻れない可能性もあることをわかってよね。それと、試合中にこうやって話してくれればわかるのに、あんな言い方ないだろ!」

モリ 「試合中にそんな時間ないよ!それにそんなひどい言い方をしてないよ!」

ホタカ「あんな言い方されたら、気持ちが下がるよ!」

モリ 「戦ってる最中なんだから、それが当たり前だよ!」

こんな感じだった。とても険悪な空気が流れこのままではまずいと思い、それまで話を聞

いていた私は調整役として話に割って入ろうとしたが、そんな心配は無用であった。

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モリ 「気持ちを悪くさせたことは謝るよ。ごめん。言い方も気を付けるようにする。でももし試合中に余裕がなくてそういう言い方になったとしても、わかってほしい。でも、絶対に気を付けるから。」

ホタカ「俺も後ろからの指示は助かるから、自分ができていないことがあったらどんどん言って欲しいし、失点シーンはごめん。」

まさしく、青年から大人に変わった瞬間だった。すこし論点を整理してみると、⑴ゴー

ル前の守備の戦術、⑵トランジション、⑶コーチング、⑷熱量、おそらく2人の会話の中

には、この内容が含まれていたのかと思う。ミーティングなどのピッチ外では冷静に話し合うことは、この代のみならず出来ていたと思う。しかし、感情が入ると建設的な話し合いはあまりできていなかったように私は感じていた。ホタカとモリは自分の主張に感情を乗せて、さらには、相手の感情も一緒に整理しながら、自分たちの答えを作り出していた。2人のこの成長は、私自身がチームに対して長年望んでいたものなのでとても嬉しく、すぐに自分のノートにメモを残していた。しかし、今考えるとそれは2人だけでなく、このチームの中では当たり前になっていたのかもしれない。

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ここからは、私の恩師の言葉を引用する。

日本には豊かな文化があり、それは「思いやる文化・察する文化」と言ってもいい。

グローバル時代を生き抜いていくには、こうした

日本文化の良さを大事にしながら、異なる価値観や文化を持っている他者に対して、その

背景を十分に理解しながら、じっくりと時間をかけて説明説得していき、折り合いをつけ

て妥協点を見出していくことが必要となる。

私は最近「意見をぶつけ合う」という表現をあまり好んでいない。ぶつけ合うという表

現からは本気度が感じられるのでその点は好きだが、一方ぶつけ合うという表現からど

ちらかが壊れてしまうかもしれないと連想されてしまうのに違和感がある。ただ、それに

代わる言葉は見つかっていない。しかし、2人の会話はそれを体現して見せてくれたと思

う。

 

②「自分を知る意味」~選手権決勝トーナメント1回戦での出来事①~

2020年10月11日(日)、この日を忘れる人はいないだろう。東京都ベスト8という

目標を掲げ、チーム一丸となって戦った最後の日である。この日の出来事は、かんたんに

語りつくすことができないが、印象的な出来事が2つあったので記しておく。

対戦した東大和南高校は、言わずと知れたパスサッカーで東京を魅了してきたチーム

である。それに対し昭和第一学園もボール支配率で負けてはいなかったと思う。しかし、DFラインの少しのずれを見逃さず、東大和南はボールを繋ぎながらもシンプルに裏に開いたスペースを狙ってきた。そのDFラインのずれを誘発したのが、相手シャドーの選手だった。DFラインと駆け引きをしながら、昭和第一学園の中盤2人に対し、数的優位を作るために、DFラインと中盤ラインとのギャップを狙っていた。

これにピッチの中でいち早く気づいたのはレオンだった。そのことを前半途中に行われたクーリングブレイク中にベンチの仲間に伝えていたのである。この現象に気づいたレオンは前線からボールを奪いに行く際も、そのシャドーの選手を気にしていたが、なかなか掴めずにいた。数的不利なわけで、当たり前なのだが、ボールを奪いに行きながら自分のエリアをずっと守っていたのである。この現象を仲間に伝え「自分が見失っていたら、外から気づかせて欲しい。」と。なんてこともない話に見えるが、ここにレオンとチームの成長を感じた。

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入学当初のレオンは、上手くていい選手だなと感じていた。でも、他の指導者からの評

価は逆であった。私がそれに気づいたのは、Bチームになってからである。そして2019

年2月3日(日)に転機がおとずれた。目白研心高校と練習試合をアウェーで行った。朝

早いキックオフの上に、会場が遠いという、選手にとっては大変な環境だったかもしれな

い。その試合でレオンはB2だった。しかもそれまでアタッカーやトップをやっていたレ

オンにとってボランチでの出場は試練だったと思う。だってB2は言わば一番下のチーム

なわけだから。もちろんその意味を試合前にレオンと話した。でも、ネガティブなことを

言った記憶はない。そのチームやそのポジションでやることの意味、言わば、レオンが成

長するための大きなチャンスだと思っていたからである。もちろん苦しんでいた。試合中

に弱音や仲間への暴言が全くなかったわけではない。試合では孤軍奮闘していたが試合

の結果は負けだった。でも、自分との闘いには勝っていたんだと思う。それが、この大事

な試合の時に垣間見れたのである。自分のことしか考えず、チームのことが理解できず、

チームの結果より自分の結果を優先していた小さな人間が、チームの目標を達成するた

めに自分の力だけでなく、自分の足りなさを素直に認め、仲間を信じ、仲間とともに戦っ

ていた。かっこよかった、素直にそう思う。試合に出ているから、仲間から信頼されてい

るとは限らない。でも、おそらく仲間の信頼を得るための努力を、見えないところでやっ

ていた証拠だと思う。それもまた私が気づいていないだけで、この代のみんながやってき

た努力なんだと思う。改めてこの代の強さを感じることができた。

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自分が成長するための方法はたくさんあるので、ここでは割愛しておくが、どんな方法

をするにしてもやっておかなければいけないことがあると考えている。それは「自分を知る」ことである。人は、五感を使っていろいろな物を捉えている。しかし、自分のことはとても捉えにくい。鏡で見れば、自分の顔やスタイルは認識できる。でも、自分の頭の中や、心の中までは見ることができない。そうすると主に他人からの評価などで自分自身を認識するようになってしまい、本来の自信や本当の強さを持ちにくくなる(他人からの評価はとても大事なことであるので勘違いしないように)。もし自分と向き合えたとしても、人は誰しも弱い部分があって当然なので、その弱い部分と向き合うことを避けてしまい自分勝手になる。これもまた、人間である。でも、その道を通らなければ、自分が描くなりたい自分にもなれないし、ましてやチームの目標を達成できる一員になれるわけもない。だから、きっとみんなは自分の弱さと向き合っていたんだと思う。

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でも、一度向き合って終わりではない。これからも成長し、なりたい自分に近づくため、これから出会う仲間と目標に向かう時には、いつでも自分と向き合い、自分と闘わなければならない。さらには、なんども言うが自分で自分のことを捉えることが難しいからこそ、他人からの意見や他人の考え方に触れることはとても大切である。それに触れて、自分との違いについてよく考察し、自分が成長するためにどうしたら良いのかの答えを見つけて欲しい。ここで他人と比較することで、落ち込む人や、ふてくさりたりする人がいるが、それは自分と闘っていない証拠でもある。他者(他人や本など)からの考えを自ら求め、それを受け入れて考え、そして自分で判断し、これから起きるさまざまな出来事に対して挑戦していって欲しい。これらのみんなの成長を本当に楽しみにしています。

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③「自分の武器とは」~選手権決勝トーナメント1回戦での出来事 その2~

自分の武器は?と聞かれてみんなは何を答えるだろう。自分の武器というキーワードは龍先生から教わった自主練を通じてその大切さを学んだと思う。サッカープレーヤーとしての武器はすぐに答えられても、サッカー以外の武器については、どうだろうか。これから社会に出ていくみんなは、それぞれの世界で通用する武器をこれから身につけていくことになると思う。もちろん、すでに身につけた人はそれを磨く作業になるのかもしれない。これからもこのキーワードは大切にして欲しい。

東大和南高校との試合は、終盤何度もゴールを襲ったが決めきることができず1-2という結果となり、東京都ベスト8という挑戦は幕を閉じた。試合が終わった後、涙を流すものは少なくはなかったが、チームの輪から外れて、コートの端でひとり泣いている人がいた。それはカイトだった。

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しかもその時の泣いている姿が印象的だった。悔しく泣いている姿はうつむいている印象を想像するが、カイトは違った。コートをじっと見つめて泣いていた。おそらく、自分の中で何かを整理していたのだろう。この話は、誠に勝手な私の想像なので、カイトに会ったら全然そんなことないですよって言われるのが目に見えているが。だけど勝手な想像だとしても、そこからとても大切なことを感じた。

1年生の時にカイトは、Aチームに上がれる実力があるのにも関わらず、自分勝手な思いからBチームでやりたいと言ってきた。その時の話を今カイトに聞いたら、なんて答えるだろうか。やっぱり、その時の判断が正しかったと答えるだろうか。でも、今のカイトがその時の状況になったら違った判断をするんじゃないのか、非常に興味がある。今度会ったら聞いてみよう。龍先生の言葉にもあった通り、カイトはA2時代に先輩とともに戦い、大きく変わったように思える。しかし、最初から最後まで自身のプレースタイルやサッカーに対しての価値観は変えなかったようにも思える。自分が思い描いているイメージや目標を信じる力が強いんだなあと思った。進学先を報告しにきてくれた時も強い衝撃を受けた。入学当初は、目を見て話すことはなく、心がこもっているようにも思えなかった。そんなカイトの目はいきいきとし、笑顔でスペインに行ってサッカーを学ぶんだと言ってきた。

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ここでみんなにも知っていて欲しいここがある。昔から日本の風潮なのか悪い文化なのかわからないが、人の挑戦を笑うものがいる。無理だとおせっかいを言う人だっている。もちろん、親身になって心配しているのかもしれない。でも、どんなに人と違うことに挑戦しようとしても、決して他人の挑戦を否定して良いという理由にはならないと思う。そして、その挑戦に大小は関係ない。大小を決めるのも他人じゃないから。きっとそれは否定する人にはそのイメージがないだけであって、挑戦する人がそのイメージをもっていれば良いのである。だから、これからみんなが目標を見つけた時に、恐れずにチャレンジして欲しい。そこに挑むのか、やめるのか、別の目標を探すのか、決めるのは全て自分である。本気で挑戦していれば、必ず応援者が現れるだろう。

私はカイトの挑戦をこれからも楽しみにしている。自分を信じる力を存分に発揮してもらい、イメージしている自分へのチャレンジを応援している。スペインに行き何か新しい学びをしてきたら、ぜひ私にも教えて欲しい。

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ここまで長々とお話をしましたが、勘違いしないで欲しいので言っておく。ここまでの話はまだ伝えていなかった出来事で、さらには個人の成長にとどまらずチームの成長としてとても感じとれたので紹介した。改めて、この代がサッカー部に残してくれた財産の大きさを改めて感じた。そして、みんなの財産にも必ずなっていると思う。もし、個人的に自分のことを聞きたい人がいるならば、いつでも話すので聞きに来てください。大歓迎です。

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ここまでチームを牽引してくれたリョウガには感謝している。キャプテンという重責をよく担ってくれた。今までは、キャプテンになると必ず大きなスランプを迎えていた。もしかすると、リョウガにもあったのかもしれない。でもピッチには持ち込まなかった気がする。その強さでこれからもチャレンジして欲しい。

最後に、去年のビデオリレーで私に挑戦状を叩きつけ、夏に返り討ちにしてやりましたが、卒業までに私にベンチプレスで勝つと豪語していたので、ケンシンだけはサッカー部卒業保留です。

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では、みなさんの活躍を本当に応援しています。また会いましょう。

 

2021年3月11日(木)

サッカー部コーチ 今井 崇量