IMG_0214

3年生の保護者応援団のみなさまへ

 

まだ少し早いですが、ご子息のご卒業、おめでとうございます。

そして3年間チームを支えていただき、心から感謝しております。

 

唐突な話題から始めますが、先日ある大きな神社でサッカー部の命運を占うために

おみくじをひいてきました。

その紙に書いてある言葉が印象的なものだったのでご紹介します。

 

「今の実りは、次の種」

 

ありきたりのような言葉ですが、現状とかぶってしまい、毎日思い出します。

今年の代は昭和第一学園初となるTリーグ参入を決め、

さらには下のリーグ戦や選手権などのカップ戦でも大きな戦績を上げました。

 

ある意味それが「実り」だとするならば、

現役の選手たちはそこから出た「種」に感謝し、

それをどのように育んでいくか真剣に考えなくてはいけません。

チームレベルで考えれば、3年生の「実り」を12年生が「種」として受け取る形です。

良い「種」を残してくれたと本当に感謝しています。

 

また、3年生の個人個人に関しても同じことかな、と思っています。

「実り」の部分だけを考えれば、

十分な「実り」を感じている選手もいれば、

思ったような「実り」方をしなかった選手もいるかもしれません。

チーム全体で同じような成長や感想を持つこともありませんから。

 

でも、あくまでも大切なのは「次の種」だと私は思うのです。

「工夫」でしょうか。「我慢」でしょうか。

「信頼」でしょうか。「感謝」でしょうか。

彼らがこのサッカー部で得た「種」はなんだったのでしょうか。

 

 

私たち昭和第一学園サッカー部の理念は、

「生涯向上心を持ち、成功体験を獲得できる人間の育成」です。

私たちが選手に対して全力で向き合うのは、サッカーのためというよりも、

サッカーを通してどのような「種」を残せるかに価値を置いているからです。

特にうちのスタッフ陣は東京1ですから、最高の種を植え付けたつもりです。

 

保護者の方々や仲間、スタッフからの愛を一身に受けた選手たちは、

今後はどのような場所でどのような「実り」をつけていくのでしょうか。

保護者の方々の変わらぬ愛情を栄養として、必ずや実りをつけてくれると思います。

18年の内のたかだか3年間の付き合いですが、今後選手たちが実りをあげるその時は、

一緒に喜ばせてください。

 

卒業式あたりには選手たちの言葉でサッカー部の3年間が語られます。

是非HPをご覧ください。

本当に3年間ありがとうございました。

 

 

ちなみに、おみくじは「大吉」でした。

 

監督 鈴木龍

 

3年生への言葉

 

IMG_0108

アツキ

職人センターバック。同じ学年に強力なライバルがいる代に生まれたアツキは1年次からどうしても競争に苦しんできたように見える。気の強さや体のサイズ、強さ、スピードどれを武器にして戦っていくのかなかなか先が見えなかった。自分の存在価値を自分自身が見つけていかないと勝ち残れない世界である。Bでも飛沢などが抜けていく中取り残されたように見えた。しかし、最後の最後に頭角を現した。もともともっていた配球能力と強さを武器に、Bの中心として信頼されてからはまるで違う顔つきになってしまった。愚直なまでの堅実さは他の人にはまねできない。それこそスタートの選手にも勝る堅実さだった。チームには必ずアツキのような存在が必要である。チームの後方で信頼の杭を打ち付けたような存在感は本当に頼もしかった。今後もそれでいいのでは?愚直なまでの堅実な縁の下の力持ち。もはやお前の武器は、社会に通用していくものだと思うよ?

 

IMG_0292

アユキ

大きな怪我を抜きにしては語れない。前十字の怪我をしてから半年以上耐え忍んできたアユキ。サッカーをやりたくて中学時代から練習に参加し、そのモチベーションでチームを活性化してくれていただけに、おれは本人以上に悔やまれ、残りの生活を本当に不安に思ってしまった。しかし、それはいらない心配だった。こんなにもピッチ外で周りの指導者が信頼を置き、それに全力で答えようとした選手は過去にいただろうか?自分ではサポート役は中学から慣れていると言っていたが、もはや中学レベルではなく、社会でも通用するパフォーマンスだった。常にポジティブに人をつないでくれるアユキを前にしたら、誰も弱気なそぶりは見せられない。指導者さえも、鼓舞されてしまう。怪我がなければもっとうまくなったかもしれない。でも、怪我の間と怪我の後の一つ一つのアユキの行動が、AB関係なく、この代の「粘り強さ」につながっていたのだと確信しているよ。

 

IMG_0400

ハヤタ

一見淡々とプレーしているように見えて熱い選手。俺はたまにBチームの選手に仲間同士の評価を聞くようにしていた。その中で、皆が口をそろえて言うのは、ハヤタが毎日とりつかれたように「Aに行きたい。」と言っているということだった。おれは意外だった。プレー自体がパサーの選手なだけに派手さを演出しない選手だったが、その選手が常にそんな熱い思いを持ち続けていたなんて。それを聞くようになってからは、自分の欲求ややりたいことをぐっと我慢しながらチームの流れを作ることに徹し、その葛藤を抱えたうえでチームをまとめようとしているように見えた。その土台は本物で、その欲求とチームへの愛がマッチした試合は途端にスターになってしまう。昔のファンタジスタのようなプレーぶりだった。野望なくして成功なし。そのあふれ出る野望は、試合を何倍も面白くしてくれていたよ。お前のスルーパス後の姿勢からは目が離せない美しさがある。

 

IMG_0255

ヒナタ

思えば3年間担任として一緒にいながら、練習ではあまり一緒にいられなかった選手。普段は明るさと協調性を武器にしながらも、プレースタイルは真逆で、生粋のアタッカー。サイドを駆け上がるスピード感、そのスピード感でのファーストタッチは人を魅了する力がある。最後のリーグ戦の後半にみせた1STタッチで会場全体が揺らいだのが忘れられない。一緒にもっとプレーをしたかった。教室に一緒にいるのに、毎日の練習の辛苦を共有しきれないもどかしさは他の選手にはない思いである。優しさゆえに、周りよりも自分に原因を探すその性格は、アタッカーとしての爆発を鈍らせていたのかもしれない。しかし、そんなヒナタだからこそ、全員がその突破に期待し、成功を喜んでいるように見えた。おれの力ではなく、どんどんチームに成長させられていくヒナタを見ていると、嬉しさを強く感じながらも、どこか親の手元を離れて成長しているような切なさも感じていたかな。

 

IMG_0333

オオクボ

ヒナタ同様に3年間担任でありながらあまり一緒に練習が出来なかった選手。だれからも愛され、けっして人を悪く言わず、自分と向き合ってきた男。3年間サッカーが好きだ、とはっきり曇りなく言い続けられるやつはそうそういない。その武骨な人柄に人は惹かれ、なにかしてやりたいという気持ちにさせられてしまう。しかし、おれはなにもしてやれなかった。進路に関しても思うようにサッカーができる環境に導いてあげられなかった。選手として不器用なオオクボに気の利いたアドバイスもできなかった。それなのに、オオクボはリーグで目を疑うようなヘディングを決め続け、スペシャルな存在になっていった。心から成長とその努力が報われていることに喜びながら、やはり少し切なさを感じていた。本当に、嬉しいんだよ、お前の成功は。ただ、おれが仲間はずれな気がしてどこか寂しいんだよ。親とはこんな気持ちなのだろうか…。

 

IMG_0302

ソラ

体力モンスター。青梅FCはどのようなトレーニングをさせてきたらこんなモンスターを生み出せるのか謎である。15周を21分台で走ってしまうと28分以内という基準が間抜けに見えてしまう。間違いなくこの男がいたので「走れる代」になったのだと思う。コーチングをしないのは性格なのか遠慮なのか…。これだけ人の先頭を走ることができる選手がコーチングをして支配しだしたらチームを激変させてしまうとずっと思っていた。それが的中した。選手権の地区予選決勝、チームの中心は間違いなくソラだった。苦しい時間でも颯爽と走り、ショートパスとコーチングを繰り返しながら試合を支配していく。本当にあの時間、スタートの連中やA2の選手すべてを差し置いて、チームの中心そのものだった。その後もリーグでソラの無双が続く。やはり、走る奴は信頼できる。そう確信した選手だった。お前はすごい。良く成長した。最後の方、最高にかっこよかったぞ。

 

IMG_0350

マサカズ

一番下手だった男。GW合宿で体を張らずに一番最初に怒ったような記憶がある。ただ、そのあとの試合では体をはっていて、この選手は背中を押すことでできる選手なのかな、と感じていた。そうしたら、3年次には別人になってしまっていた。あれだけプレーが遅いし、ミスが多い選手が、ボールを収め、攻撃の起点になっていた。人に埋もれるようなところがあったのに、いつの間にかソラやヒロトを抑えて15周やマラソン大会で先頭を走っていた。背中を押すどころか、いつの間にか自分の力で力強く人を引っ張るまでになっていた。おそらくそのようになるまでに今井さんに助けられ、仲間に助けられ、一方で他への劣等感との戦いがあったのだろう。それを思うと、選手権でAとBをつなぎ、すべての自信がない選手たちに勇気を与えたあのPKは、震える。茶番なんかじゃない。あの一点にはチームの理念がすべて詰まっている。だから得点後の写真は、最高の1枚になったのだろう。

 

IMG_0249

オカベ

調子のいい男。すごいモチベーションで覇気をまき散らしながら走り出したかと思うと、終盤には透けて見えるくらいに弱弱しくなっている。この3年間も集中して苦しんで乗り切ったという時期がどれだけあったかわからない。ただ、ストライカーとはそんなものなのかもしれない。唯一安定していたのが、AB関係なく、得点のにおいを一番まとっていた男であるという点だ。1年生のころからである。右サイドの崩しから中に引き出し、左足に持ち替えてのシュート。リーグ戦でイーブンボールをつぶれながら触る力。全てがストライカーそのものである。AB入れ替え時には本当にその才能が開花することを陰ながら望んでいたが、万事休す。しかし、サッカーにはおまえのような男がいないと。お前のような人を魅了する一発を持った選手がいなかったら、サッカーって面白くないよな。お前がいるだけで試合がわくわくしてしまう、そんな不思議な選手だったよ。

 

1

タクト

寡黙な守護神。タクトは下手だった。決して恵まれた体格や運動能力があったわけではない。フィールドの奥に届く声があったわけじゃない。他の代のように、支え合い、切磋琢磨できる仲間がいたわけじゃない。少し能力があるGKが現れるとなかなかポジションを奪い返すことができない不遇のポジション。そんなタクトが3年生でミーティングをした時に強く言った言葉が印象的だ。「おれは、試合に出たい。どんなに努力をしても、努力すればOKなんてことはない。途中出場すらできないポジションがGK。きれいごとじゃない。試合に出て、活躍したい。」そんなことを語っていた。辛くても悔しくてもずっと一人で現実と向き合うしかなかったタクト。その消化できるわけない感情がタクトには渦巻いていた。最後の最後はそんな気持ちの勝負になる。もう攻めるしかない久我山戦の後半で、絶望的なPKを与えてしまったシーンで出場したタクトに奇跡を見た。わかっていたかのような力強いセービング、そしてそのあとの泥臭いセカンドボール。チームが息を吹き返した瞬間だった。もしもあそこでPKが決まっていたら、チームは最後まで戦えていただろうか。全ての感情を含め、タクトが守ったのは、PKの一点ではなかった気がする。

 

IMG_0014

タカト

突っ込みどころの多いムードメーカー。最強世代の部長を担った男。A1でもしかしたら一番出場時間が短かったかもしれない。はっきり言ってこの男はよくぞ最後までここに居続けたという選手である。スピードや強さなんてなかった。むしろ遅くて弱い。他のポジションもできない。それなのに、練習では常に前向きで、常に中心で、腹が座っている。しかし、こいつは大器の片鱗があった。タカトは3タッチしたら凡人以下。2タッチで凡人。1タッチでスター。1発で流れを変える力があった。常にこの1タッチを狙い続けてくれることでA1の攻撃のスイッチの意識は練習から入り続けた。ミスがなくなるまではいかなかったが、こいつの腹の座り方、攻撃の意識、チームのけん引力は間違いない。フィールドでもっと結果を残してあげたかった選手だが、間違いなく練習などの積み重ねる部分はこいつが作り出したものだった。お前がいなかったら試合は勝ててなかったと思うよ。もし、もう一度部長を選ぶとしたら、おれはお前にする。

 

IMG_0107

ツカサ

お前の中の何がどう変わったらこんなに成長するのか聞いてみたい。新チームではスタートだった男が徐々に出番を減らしていく。冬の社会人との連戦とそのあとの練習はすべてツカサのためにやっていたようなもの。それでもスカスカな右サイドは解決されず。それが、夏の地区トップ拓大一高戦でシイナが不在だった試合に激変した。ツカサと心中するつもりで戦ったこの試合をきっかけに、急に自信を見せ、急に試合を楽しみだした。東京高校戦ではケンノスケ不在で良かったのではないかと思われる圧倒的なパフォーマンス。いつのまにか課題だった選手層の薄さは、選手層の厚さに変わってしまった。ツカサの自信はいつのまにかチームの明るさを引き出していった。本当に成長したな。本当にたくましくなった。そして恋の行方がどうなったのか、おれは気になっている。

 

IMG_0463

カナメ

くすぶり続けた圧倒的アタッカー。1年次から最強右サイドアタッカーとして活躍をはせたカナメは徐々にくすぶり始めていく。ツカサと同じく右サイドの穴をなかなか埋められず。いつのまにか右サイドがチームの課題となってしまった。サイドバックではパスが定まらず、アタッカーでは抜ききれない。徐々に後半のスーパーサブになるがなかなか結果が伴わない。それでもおれはお前に期待してしまうんだよ。サッカーの醍醐味でもあるサイドの疾走感を一番出せるのはお前だったから。うまくしてやれなかったのは俺の使い方にあるのかもしれない。カナメを活躍させるためにもっと違う方法があった気がする。それでもやはり、見ている人を魅了するお前の爆発的なサイドの突破が見たくて、その瞬間にかけ続けてしまった。お前は苦しかっただろう。申し訳ない。でも、やはり見たい。今でもお前の疾走感のファンだよ。

 

IMG_0408

ムギ

チームのために自己犠牲をし続けた男。右サイドアタッカーとして年末フェスティバルで得点王とMVPの両方をかっさらったムギ。しかし、右サイドバックの不安定感から最終的にそこをチームのために任された。おそらくアタッカーとしての伸びしろに自信もあっただろうに、苦手な部分に向き合うのが大変だっただろうに、チームのために仕事を全うしてくれた。しかし、その蓄積が他の選手の成長の時間を作り出し、ムギが怪我や体調不良でできないときもチームの力は揺るぐことがなかった。そして、ヘディングとスピードをその場所に生かす形で伸ばしたお前は本当にチームの影のMVPである。1年次に全く鳴かず飛ばずだったお前を、揺るがない信頼でプッシュしたのは今井さんだ。ムギと今井さんを信じてよかった。最後の試合はいつの間にか右サイドが主戦場になっていた。このチームの右サイドの支配者は、お前だ。

 

11

トビサワ

お前がAチームで終わるなんて、想像できなかった。1年次から先輩にかわいがられ、良いキャラクターで存在感はあったものの、サッカーではなかなかよさも出ず。それが今井さんからの圧倒的な信頼を得てBチームの主軸に。Bの試合でのお前の信頼感と圧倒的パフォーマンスは本当に驚いた。顔つきが入学当初と全く変わっていた。それがA2では自信が0に戻り、もう一度作り直し。繊細な選手だよ、お前は。なかなか這い上がってこない状況ではあったけど、A2の希少な3年生として、おれは感謝している。3年生が数人しかいないA2で、しかも言うことを聞かない後輩たち。その中で、マナトが3年で引っ張ろうと言った時、お前はとにかくそれに向き合った。何かしたわけじゃない。でも、決して逃げなかった。逃げずにいてくれたから、A2は進みだした。できないことは多かったかもしれない。A2は繊細なチーム作りができないから繊細なプレーが武器のお前は活躍しづらかったかもしれない。それでも向き合ってくれた。その心の強さは、本当に感謝しているよ。

 

IMG_0230

トモキ

持ち前の明るさでA2を支えた男。トモキ抜きにしてA2は語れない。A2はA1と一緒に練習はするけれど、自分たち中心の練習ではない。自分たち中心の練習ではないと、やはり試合ではなかなかかみ合わない。そんなA2には試合中に戦いながら手触りでチームを形作れるファイターが必要だった。その象徴がトモキだ。思い返せば激闘ばかりの地区リーグ2部だった。たいしてビデオすら残っていない。でも、1試合ずつが最高だった。特にトモキの印象が強いのは大成高校戦だ。離された点差を一つずつ詰めながら戦っていく中でいつの間にかトモキの試合みたいになってしまった。一生の中であんなに名前を呼ばれる試合がいくつあるだろうか?また、あのような派手な試合も好きだけど、おれはリーグ最終戦片倉の右サイドの攻防は最高にしびれたよ。どこかお調子者で集中に欠けていたお前が1試合を通して見せたあの顔は、忘れられない。A2を愛していなかったらあんなチームのための1対1はやりきれない。結果、相手の決定的なセンタリングは0本だった。大して脚光を浴びないA2。でも最高のチームだった。その一つ一つの試合に必ずトモキがいたかな。A2でもっとも信頼していた男である。

 

4

シュウヤ

サッカー大好き小僧。底抜けにサッカーが好きな選手。ただ、それゆえに自分のスタイルを持ちすぎてしまう。ドリブル大好き、連動よりも一人で突破!空回っている試合を何度見たことか…。それでもなんだかんだA2に這い上がってきたシュウヤ。どうチームプレーを叩き込んでやろうかと思ったが、なかなか変わらなかった。それが、チームによって徐々に変わっていった。サッカーが好きなのは変わらないが、A2をトモキとペアで大切にし出してくれたように感じた。特に後輩と自分たちの役割が見え始めたのかもしれない。国士舘のボコボコにされた試合あたりからどこか印象が変わったかな。シンプルなプレーと協調性が発揮されている試合はやはりしぶい良さがある選手。本当はしぶさが長所の選手だと思うけど。常に明るく、A1とA2に壁を作らず、3年と2年にも壁を作らない。そしてBチームを知っている選手。シュウヤはどこにいても常に楽しそう。そんな振る舞いができる選手は宝だよ。おそらくつらいときも悩みもあったかもしれないが、昭和第一学園というチームにシュウヤがいてくれて、本当よかったと思う。

 

4

マナト

ミスターA2。A2は本当に大変なチームだと思う。指導者も大して助けてくれず、練習ではA1にぼこされて、自分たち中心の練習でもない。そのくせリーグで優勝しないとBが昇格できずにプレッシャーがすごい。マナトは1年次はチーム1,2番に地味な選手だった。コーチングはチーム最下位。強さや動きは並以下。スピードなし。しかし、ふと2年次の練習で気づくとFWとして自我が出ている。なんとなく上に引き上げてみると、不思議とボールが集まる。そして、意外と粘り強く、地味だが人に伝わる闘争心の出し方を持っている。そして体が強くなってきてからはマナト抜きではチームにならなくなってしまった。まさかA2のキャプテンになるとは思わなかったが、今思えば大当たりの選手である。ただ、なぜこんなに伸びたのか。授業を持ってみて少しわかったのは、理解力が高く、工夫もできるという人間力を持っているということだ。A2はマナトに頼りきりだった。他の3年生やショウタがいたとはいえ、マナトへの負荷は高かったと思う。お前はどんな風に思ってチームを牽引してくれたのだろう。おれはベストを尽くしたつもりでも、もっとA2にしてあげられたことがあったのではないかと今もふと思う。俺もマナトに頼ってしまった。でも、マナトのチームは最高だった。今、マナトの話が聞いてみたい。

 

IMG_0527

ケイタ

この世代のスピードスター。中学生の時に練習に来た時は、少し頼りない感じがした選手。しかし、入学後に一番最初に印象が変わったのはケイタだ。愚直で真っすぐな性格、こつこつとやる努力家、いつの間にか1年生チームの中でも目を引く選手になっていった。しかし、特に器用な性格でもないケイタはA2の中である程度の結果を残していったにも関わらず、ゲームの流れの中心にはなれなかった。俺がA2専属でもっと向き合えていたら、もっとケイタの情熱に応えられていたかもしれないが、俺はこのままではケイタをつぶしてしまうかもしれないと感じた。ケイタと話し、苦渋の決断でBチームで中心的になることが成長の一番の近道だと考えて、Bに移籍した。Bに移籍してからもなかなか中心的になってこないケイタを見ていつも自分の判断が正しかったのかと不安だった。ただ、そこはさすが今井さん。ケイタに立派にチームを理解させて、選手権のメンバーに送り込んでくれた。「戻ってくるのおせえよ」とケイタに言いながら、心から嬉しかったかな。Bにしてよかった。当時の何倍もお前はかっこいい。

 

17B5289C-D0F0-4520-AC84-4EC8F0F5A9B9

タイセイ

もっと調子乗ってほしかった選手。クサビの受け方、懐の深さ、ゴール前のすき間で受ける力、テクニックに関わる良さを多く持ったFWの選手。A2の一時代を支えたにも関わらず、ケイタと同じくBチームに移籍させた選手。このままA2では爆発していかない。あともう一歩FWらしく自信や、遊びを出してほしい…、そんな悩みからBで伸びることを期待して苦渋の決断で移籍させたが、その日に後悔した。なぜなら、そのもう一歩の遊びやユーモアをその日のレクリエーションの中では存分に発揮できていたからだ。こちらの気苦労を返してほしい。数ある自己紹介動画の中でもタイセイの動画がずば抜けてふざけていた。なぜもっとその遊びや自信をサッカーに出さなかったの?もしかしたら真面目さを求めて出させてあげられなかったかもしれない。後悔した。かと思ったら、ゲームメイクでの良さではなく、別の部分のゴール前のヘディングシュートなど、ポジション取りと泥臭さでBでは活躍していた。おれはいったいタイセイの何を伸ばすべきだったのか…。ごめん。ちょっとお前はよくわからない。もっといじくり倒してやればよかった。今更ながら大器の片鱗を感じてしまう。

 

IMG_0298

ナオ

つかみどころのない選手NO1。ナオは高身長で、快速で、体も強い。要素で言ったら最高。なのに試合では波が激しい。メンタルの揺らぎではなく、集中力の問題だろうか。1年次は授業で集中していないと先生に怒られたと思ったら、次の学期には爆発的な好成績をとったりする。かと思ったら、がくんと別人のような悪い成績をとる。チームでも集中に欠ける時がある一方で、すごい集中力で話を聞き、周りに発信することも多々ある。おれの想像を軽く超える選手だった。今まで悪いやつも、弱いやつもいろいろいたが、ナオはつかめなかった。しかもBにいったらキャプテンやっているし。しかし、たくましい。どこに行ってもポジティブである。悩みもあるのだろうがそれを察することができない。気づいたら、「今日のナオ」みたいな感じで楽しみに試合を見るようになってしまった。謎だらけである。その謎の一つに、ナオは喜ぶときは大げさに徹底的にである。それをみていると、なぜか、こちらが嬉しくなってしまう謎。器でかいんだな。人を魅せる力あるな。と思ってしまう。こういうやつが将来大富豪になったりするのかな…。

 

547BC873-3A19-49E8-8920-3C97B72106AA

ヨシト

まさかのエンターテナー。ヨシトは入ってくるときはボールを失わない重心の低さに良さがあると思っていた。そしたらボランチでのプレスの多さが目を引くようになっていた。その良さを買ってAチームのボランチの一人にしようと考えていたら、いつの間にか外せないアタッカーになっていた。ここに行きつくなど考えもしなかった。確かにチームの不足部分にチャンスをつかんでいった感じはあるが、それだけじゃない気がする。真面目で優しいやつなのは変わらないけど、何か性格に大きな要素が加わった気がする。自信だろうか。楽しんでいいんだという仲間との関係だろうか。それとも勝負に魅せられ始めたのだろうか。ヨシトの言葉で教えてほしい。小松川の得点を皮切りに、パフォーマンスはうなぎのぼり。最高のパフォーマンスは国士舘の右サイドの1対1。完全に相手を翻弄し、絶望を植え付けた。国士舘戦はあまりに大きい節目だった。ヨシトのあのプレーをもう一度見たい。大切な時期にレクリエーションで骨折するような間の悪さは少し愛嬌がある部分だろうか。

 

IMG_0453

ユウト

おれが思う天才。理想のチームを作れるなら、ユウトが欲しい。360度のボールさばきを持つドリブラー。しかし、性格がちゃらんぽらんだから実際は選びはしないけど…。1年次から女にうつつを抜かし、練習に身が入っていないという悪い噂ばかり。がむしゃらにがんばっているなど聞いたことがない。ただ、おれはチームに必要になるときが必ず来ると思っていた。まともになり、Aチームに選ばれるだけの努力を知ってからはやはり予感は的中する。地区トップの最初2試合はユウトがいたから勝ったようなもの。10番は半端な気持ちで与えていない。充分その価値を返してくれた。ただ、夏休みの勉強との両立の仕方などはアスランの方がずっと上手。お前はもっとビッグな選手になれた。そのためにはもっと人間的に成長しないとだめだ。これからはもっと自分自身と、その周りの人をよく見ろ。まだまだお前はしょうもないんだから、足りてないところを一生懸命埋めろ。そうすればやはり、お前は人にないポテンシャルを持っている気がする。

 

IMG_0278

カイト

このチームのプレーモデルはカイトがいなかったら成立しない。いまだに現役の選手たちにそれを言う。カイトがすべて作り出していた。ハーフスペースの概念を誰よりも理解し、誰よりも明確に描いていた選手。おれの今後の選手選びに大きく影響を与えた選手。カイトはスピード、技術、運動神経、すべてがいうなれば並な選手。ただ、ずば抜けた「目」を持っている。状況を見る「目」だ。ビデオでカイトを見ると、びっくりする。仲間の1歩1歩を見て自分の走るコースを何度も変えている。「目」が運動能力を超越するんだから、サッカーっておもしろいな、と改めて思ってしまった。まるでパッとしなかったカイトを見抜いてAに推薦する今井さんもすごいもんだ。気づいたら最後まで使い続けていた。カイトはこの3年間どのようなことを考えてやってきたのだろうか。3年間取り組んだ結果、何を思うのだろうか。お前の「目」は何をとらえているのか知りたい。

 

IMG_0004

ケンノスケ

うちのどのアタッカーよりも突破成功率が高い最強サイドバック。うちの武器は左サイドの連動。その連動の表の主役がケンノスケだ。この大型でストライドが長く、美しい左足の選手を誰もがあこがれるのではないだろうか。堂々としていて運動量もあるこの選手を。しかし、2年次まで全然こんな選手じゃなかった。弱気で黙っている地味なレフティー。自信とはこんなにも人間を変えるものかと驚きである。ただ、後輩たちは知っておいた方が良いが、ケンノスケの左サイドの連動は練習とコミュニケーションのたまものである。少しずつみんなで作り上げたものである。その全員の練習や試合の積み重ねの、最後のゴール前への配球者がケンノスケだっただけ。だから、ケンノスケはみんなの想いを込めたクオリティでボールを届けていたんだと思う。右サイドのムギが残ってくれて、カイトがスペース作って、アスランとヒロトが体をはって、ツネがケンノスケに。積み上げた自信は本当の力になる。よくここまで作り上げてきたな。チーム最強の武器にふさわしい努力の過程だったよ。

 

IMG_0071

コウタロウ

さぼり癖のあるドリブラー。中学生の時に練習に来たコウタロウを見て、この選手は昭和第一学園の中心になる選手だ。と一発で感じた選手。ボールタッチや運び方、どれをとっても魅力的だった。しかし、性格のちゃらんぽらんさだけは予想外だった。微妙なさぼり癖、遅刻をし続ける責任感のなさ…。どこかサッカーにのめり込んでいないようにも見えた。ただ、それが変わっていったのは地区トップを戦った8月ころから。最初はシイナやユウセイ、ツネにヒロト、カイトなど周りの選手がコウタロウの分を走っていたが、それが徐々に1試合集中するようになり、いつのまにか十分なタフネスを手に入れた。それを手に入れたコウタロウは久我山戦では圧倒的なパフォーマンスだった。お前を見て、昭和第一学園は今後もっと強くなれる、強豪にも通用する、と確信できた。誰よりも仲間に感謝してほしい。人生の宝だと思うぞ。

 

IMG_0116

シイナ

圧倒的なポテンシャルを秘めたお子様CB。前にも一度言ったことがあるが、DFでプロになっていく選手はこのような選手なのかもしれないとおれは思う。フィジカル、スピード、ヘディング、ロングフィード、最強世代を攻守で支えたのは間違いなくシイナだった。シイナが精神的にもっと成長していれば、上の代ももっと勝てただろう。しかし、入ってきたときのシイナは精神的に子供すぎた。すぐにカーっとなってしまい、組織の連動が出来なくなり、個人プレーに走ってしまう。そんなシイナが大人になったのは3年生の夏になってから。ツカサの成長や相方のユウセイの支え、勉強と両立するために奮闘するアスランの存在、その他もチームの成長に引き上げられる形でじっくり大人になっていった。国士舘のスーパーフリーキックは新しい自分へののろしのようだったかな。心が整えばお前は最強だ。やれるところまでサッカーを続けてほしい。プロの夢も見せてくれ。

 

IMG_0126

アスラン

良くも悪くもチームのエンジン。この選手は癖が強い。強すぎる。誰もを魅了する左足を持ちながら、気分によっては全員の足を引っ張るリズムブレーカー。なぜ頭が止まるとこんなに自分勝手に振る舞い、周りが必死に気を遣っても完全に無視できるのか…。視野が狭く、ふてくされる。それなのにチームはアスランを見放さない。なぜかアスランに期待し続ける。たぶん良いやつだったんだな。そんなアスランは8月のチームの成長期より前に変わり始める。インターハイあたりに不調のピークを迎え、さらに勉強とのバランスに悩む。それが急速にアスランを成長させるようになった。足と頭が止まる後半に交替するパターンが徐々に崩れ、最後までチームのために必要な献身的な選手に変わっていく。アスランの挙げたゴールはどれもきれいだが、苦しみの中で出した本郷戦でのFKと、チームを引っ張る存在へと変貌した明八戦のヘディングシュートは印象的。苦難がお前を成長させる。今までもこれからも。だからこそ、支えてくれる家族や仲間を、ふと立ち止まって考えてみてほしい。みんながお前の背中をみているぞ!

 

42604F5B-7A49-4D74-8011-C3593C1778C9

ユウセイ

いつの間にか絶対的なキャプテンになっていたやつ。ユウセイは情熱をもって昭和第一学園に入ってきてくれた選手。真面目でユーモアもある選手。ただ、俺から見たらどこか物足りなさを感じていた。堅実な選手だし、プレーも信用できるし、十分に賭ける価値がある選手とは感じているのに…。それは、どこかユウセイにしみ込んでいる、周りへの期待を応えようとするあまり自我が出し切れていない中途半端感だったかもしれない。それは真面目がゆえになかなか抜けなかった。締めのコメントもどこかきれいすぎていた。それが、泥臭い試合を繰り返し、すべてに中心として存在し続けることで自我が爆発し始めた。自立しなくてはモチベーションも保てない中で、誰よりも自立し、責任感ある自我を確立していった。いつのまにかチーム全員がユウセイの言葉に惹かれ、心動かされていた。窮地を救う得点力で背中を見せ、圧倒的な自信で全員を見つめる。キャプテンはお前しかいない。

 

IMG_0395

ヒロト

寡黙なストライカー。口下手すぎる。たまに何を言っているかわからないときすらある。ただ、圧倒的な存在感を持っている。1年次は良く走る選手だな、くらいの印象だった。献身的なので上の代にも出していたがシュート意識もなく、自我もない。どこか無難すぎる選手。そんなヒロトが変わったのはキャプテンをユウセイと二人でやらせてからかもしれない。たしかに周りを考え、周りとコミュニケーションをとることが多くなった。しかし、一番変わったのは、チームのためにプレーするようになったことだ。今までは自分と向き合ってプレーしていただけなのが、チームのための自分を見つけ出した。だからFWとしてシュートを打つようになったし、プレスも効率的になった。そしてヒロトのすごいところが、みるみる得点を決めるようになっていったことと、前線のプレスがチームのアイデンティティになってしまったところ。おそらく、お前の11番は、誰が見てもかっこよかったと思う。見ていると心が震え、その泥だらけのユニフォームがかっこよく見えてしまう。最強の中の、「最高」だったかもな。

 

IMG_0188

ツネ

生粋のサッカー小僧。この世代はおそらくツネがいなかったら崩壊していただろう。昭和第一学園の心臓はツネである。もともとはそんなに責任感がある選手でもない。周りに気を遣って発言もそんなにしない選手だった。それがトランジッションの要になってからは本当に圧倒的なパフォーマンスを見せるようになった。守備の切り替え、攻撃の顔出し、ピンチのプレスバック、中盤の泥臭い部分をすべて担っていた。ツネの脈動は、チームの脈動。それでいてずっと楽しそうだった。練習の前も、練習中も、試合中も、ずっと楽しそうだった。勝つことは苦しい。ほとんどが肉体的にも精神的にもきついことばかりである。なのに、今思い出すのは楽しそうなシーンばかりである。サッカー、好きなんだな。みんな、引退した瞬間になんて言う?「あー、悔しかった」「あー、きつかった」「あー、終わっちゃった」だろうか。ツネはたぶん、「あー、楽しかった」というのではないかな。お前がいてくれてよかった。一緒にできて楽しかった。もっとやりたかった。

 

全員、たまには顔見せに来いよ。

引退してから一度も練習来なかった代は、お前らが初めてだからな…。

これはいらない「初」でした。